iPhoneでトラッキングを許可するのは危険なの?iOS14.5で実装されたアクティビティの追跡について解説

2021/05/07

セキュリティ

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4月26日にiOS14.5がリリースされました。

このアップデートには、App Tracking Transparencyという仕組みが組み込まれており、iPhoneにアプリを提供する企業は、ユーザーに許諾をとらないと広告配信をおこなうためのユーザー情報を取得できないようになりました。

そのため、多くのアプリで以下のようなポップアップが表示されるようになりましたが、よくわからない方も多いのではないでしょうか?この記事ではこのトラッキングを許可するすることは危険なのかどうか?許可するとどうなるのか?というところを解説していきたいと思います。


アプリを開いた際、トラッキングの許可を求める表示

本記事の内容

  • iPhoneでトラッキングを許可するのは危険なのか
  • トラッキングされる項目はどういうものがあるか
  • トラッキングされる項目の利用方法
  • トラッキングを拒否するとどうなるか
  • トラッキングのON/OFFの設定

iPhoneでトラッキングを許可するのは危険なのか

まず結論から言うと危険ではないです。

なぜなら、iOS14.5以前では常にトラッキングされていたため、iOS14.5にアップデートする前危険なことがおこってなければ、まず問題ないと考えられるからです。

また、このトラッキングは「個人情報」が漏れるわけではないため、個人の資産を脅かすようなものではないです。

ただ、個人が閲覧したアプリや時には位置情報といった情報がアプリ事業者、ならびにアプリ事業者が利用している広告事業者に渡るため人によっては、気になる方がいるかと思います。

本記事では、どんな情報がアプリ事業者、広告事業者にわたり、どのような使われ方をされるのかしっかり解説していきます。

トラッキングされる項目はどういうものがあるか

このアクティビティの追跡を許容すると、アプリ事業者ならびにアプリ事業者が利用している広告事業者はユーザーの端末(iPhone)に振られている「IDFA」と呼ばれるIDを取得することが可能になります。

iOS14.5以前はユーザーが特別な設定をしていない限り、アプリ事業者は自由にこの「IDFA」を取得できていました。

IDFAとは?

IDFAは32文字の数字とアルファベットを組み合わせたIDです。
重要なポイントであるのが、このIDFAはiPhone端末毎に異なるため、端末ならびに端末を利用しているユーザーを識別できるIDとなりうるということです。


自分のIDFA

また、アプリ事業者、ならびにアプリ事業者が利用している広告事業者はこの「IDFA」とともに、さまざまな情報を取得しています。

たとえば以下のような情報も取得しています。
  • UserAgent(OSのバージョンや通信キャリア情報)
  • IPアドレス(おおまかな位置がわかる)
  • SSID名(wifiのアクセスポイントの名前。大学や企業のwifiだと大学名や企業名が振ってあることがあり、どこからアクセスしているか丸わかり。例えばスターバックスやマクドナルドなどはわかりやすいですね。)
  • 位置情報(位置情報をオンにしている場合はGPSにより正確な位置がわかります。)

トラッキングされる項目の利用方法

アプリ事業者はユーザーがアプリを開いた時にこのIDFAと前述で解説したようなさまざまな情報を読み取り、広告事業者に送信します。


広告事業者はIDFAとともに送られてくる様々な情報をもとに最適な広告をアプリ内に配信します。


基本的には行われていることはこれだけなのですが、同時に以下の事柄も行われているため、今回AppleはiPhoneに今回の機能を追加したのかと思います。

広告事業者はアプリから送られてきた情報さらに他の広告事業者へ連携する

広告事業者は瞬時にさらに他の広告事業者へ取得した情報を渡し最適な広告を探します。

そのため、様々な広告事業者が前述で紹介したようなユーザーの情報を取得する形となります。

広告事業者はアプリから送られてきた情報をストックする

広告事業者は様々なアプリから送られてきた情報をストックしています。

そのため、特定の端末(ユーザー)に紐づくIDFAがどんなアプリをどんな頻度で開いていて、どこにいるのかというような情報溜めておき、次回アプリから送られてきたとき、最適な広告を出すために活用します。

たとえば、女性系のアプリ(コスメ比較アプリや女性ファッションアプリなど)からよくIDFAが送られてきた場合、そのIDFAは女性の可能性が高いIDFAとして管理され、次回以降アプリから送られてきたとき、女性に合うような広告を出すようになります。


広告事業者は時折、アプリ事業者からIDFAに紐づく情報を買う

アプリ事業者は広告事業者に送っている情報の他に、年齢や性別の情報を持っているケースがあります。たとえば、Eコマース系のアプリであれば、IDFAとともに購買したデータなども持っています。

広告事業者は上記のようなデータを取得し、ストックすることでより最適な広告廃配信を行えるようになります。

以上のような事も併せて行われることにより、iPhoneを利用しているユーザーの性別、年齢、おおよその活動エリア、ライフステージなどを広告事業者は把握することができ、広告事業者はより細かい提案をしてくるようになります。

例えば、駅前の薬局でおむつが安いというような広告をそのエリアに住んでいるであろう子育てを行っている女性に配信することが可能になります。

トラッキングを拒否するとどうなるか

iOS14.5でApp Tracking Transparency が導入され、ユーザーの許諾がないと、アプリ開発企業はユーザーのIDFAを読み取ることができなくなりました。


正確にいうと、ユーザー許諾のないIDFAを読み取ると、32桁の文字列がすべて0になりユーザーを識別することができなくなります。

また、アプリ側がユーザー許諾のポップアップをださない場合は、デフォルトで許諾なしとみなされ、IDFAを読み取ることができません。


自分のデバイスのIDFA

このようにIDFAが0の羅列になってしまった結果、広告事業者はどのユーザーが広告枠に接触したのか、過去どんな行動をとっていたのか等把握することができなくなり、事実上ユーザーを特定しての広告配信はできなくなります。


アプリ事業者から送られてくるIDFAが0の羅列になることにより、ストックしたデータを参照できなくなり、購入したデータも無意味になります。

トラッキングのON/OFFの設定

さて、ここからはこのApp Tracking TransparencyをどのようにON/OFFするのかみていきましょう。(iOS14.5では一部バグがあり設定できないケースもありましたが、iOS14.5.1では改善されているようです。)


まず、トラッキングがON/OFFどちらになっているのか確認します。
iPhoneの設定→プライバシー→トラッキングと開きます。

「Appからのトラッキング要求を許可」がONの場合
アプリを開くとポップアップが表示され、アプリ毎に許諾する/しないを選択することができます。
「Appからのトラッキング要求を許可」OFFの場合
許諾を得るポッポアップは表示されず、デフォルトで許諾しないとなります。

次にアプリ毎の設定を見ていきます。トラッキングがON/OFFを確認したトラッキングページの下部にアプリ毎のON、OFF状況が出てきます。こちらで、アプリごとに許諾をするかしないかを選択することが可能です。


さいごに

このトラッキングをONにしていたとしても、iOS14.5以前と同じ状況が続くだけですので、危険性はないですが、個人でプライバシーを守る選択できるようになったのは、とても良いことだと感じます。

一方で、広告収益で成り立っていたアプリ事業者はOFFにされることによりユーザーをターゲティングした広告配信ができなくなることにより、広告価値が下落し、いままでのように収益を得ることが難しくなってくるでしょう。

広告に支えられているおかげで、私たちは便利なサービスを利用することができたのですが、企業によってはiOSよりAndroidのほうに注力し、結果iOSの利便性が下がってくる可能性もあるため、一概に喜べない結果にならないことを祈っています。


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