はじめに
自動運転の実現は人工知能(AI)のひとつの到達点であり、人類の悲願でもあると言っても過言ではないのではないのでしょうか?いままでの産業構造が大きく変わり、自動車メーカーやそのサプライヤーへの影響だけでなく、物流業界にも大きな影響を与え、人が携わっていた業務が自動運転の登場によって奪われるかもしれません。この記事では、現在の自動運転の状況をまとめて紹介したいと思います。
自動運転レベル
自動運転の技術は1〜5段階にレベルわけがされており、その技術が実現できることによって段階が分けられています。すでに私たちが経験したことがあるようなレベルから、夢のようなレベルまであります。次の章で現在のレベル感を解説します。
現在(2021年5月)では、レベル3段階の自動車まで一般に販売されています。この自動運転レベル3を満たしている車は、2021年3月4日に発表された「ホンダ・レジェンド」で、この時点で世界初の自動運転レベル3を満たした市販車ということで、注目を集めました。日本産で世界初の市販車を世の中に出せたことは、同じ日本人として誇らしいことですね。
さて、このレベル3では特定条件下における自動運転ができるということでしたが、「ホンダ・レジェンド」ではどのような条件下で自動運転がされるのか見ていきたいと思います。
この自動車に搭載されている機能はトラフィックジャムパイロット「渋滞運転支援」とよばれており、以下の条件下でレベル3の自動運転が実現できるものとされています。
・自動車専用道路であること
・天候が良好であること
・渋滞状況にあり前後に自動車がいること
・速度は30km/h以下であること
・GPS通信が可能なエリアであること
まだまだ本当に特定の条件下でしかレベル3を満たしていないこともわかるかと思います。一方で、これを実現したのが世界初ということなので、現在の世界のレベル感も同時に推察もできます。まだまだ先は長いといった印象ですね。
また、この自動運転レベル3を実現した「ホンダ・レジェンド」の装備も併せてみてみましょう。
このようにカメラが2台、ミリ波レーダーが5台、ライダーが5台と前後の距離や物体を捉えるものを複数台備えている状況です。この状況でも前述した条件にもあった天候良好時でないと、レベル3の自動運転が実現しないのが現状です。
ちなみにライダーとはレイザー光を使ったセンサーの一種であり、目標物の距離だけではなく、形状なども把握することができ、自動運転の実現に不可欠なセンサーであると言われています。このライダー技術はiPhone 12 Proにも採用されており、3Dスキャナができる技術として話題を集めた技術でもあります。
以下の動画を見ていただければ、ライダーのイメージが湧くかもしれません。
法律の整備
次に法律の整備がどうなっているのかも見てみましょう。
日本も自動運転時代の到来を控え、法整備を進めています。
最近では2020年4月に道路交通法を改正しており、この内容が一部の自動運転にも対応している内容として、様々な記事にも取り上げられました。
この法改正の重要な点は以下となります。
1)自動運行装置による走行も「運転」と定義されたこと
これは法律で定義するまでもなく当たり前のように思えますが、これまでの法律では、運転手以外が自動車を操作することを想定していませんでした。あらためてシステムによる操作を定義したことで、自動運転システムを用いて公道で自動車を走らせることが可能となりました。
2)自動運行装置を使う運転者の義務を定義したこと
自動運転システムが終了し、運転手が運転をすることを促された際、運転手は直ちに運転に戻らなければならないとなりました。この内容に沿うと、運転手の飲酒や居眠りはやはり認められないということになっています。
3)作動状態記録装置による記録を義務付けされたこと
自動運転システムの作動状況を記録しておくことが義務付けれれます。これは事故が起きた際に、責任の所在がどこにあるのか明確化するためにこのようなことが義務付けされています。
このように日本の法律も徐々にですが、自動運転時代の到来を見据え、変化してきているようです。さらに技術が進み自動運転があたり前になると、飲酒や居眠りも今後認められるようになる可能性もありますね。
世界のプレイヤーの動向
ここまで自動運転の技術と法律の現在地を見てきましたが、今後自動運転を実現するために世界のプレイヤーがどんな動きをしているのかも見てみましょう。各自動車メーカーが運転支援技術にさらに磨きをかけて自動運転を目指している他にも新興企業の登場など業界の動きは活発になってきています。
テスラ
2003年設立の比較的新しい企業で、イーロン・マスク氏がCEOを務めています。もともとは電気自動車をメインで生産する会社として設立されましたが、その先進性から当時から注目を集め、その延長線上で現在では自動運転技術も開発しています。CEOのイーロン・マスク氏は2020年代半ばまでには完全な自動運転車を開発し、市場に投入すると発表していますが、現時点でレベル3を満たした自動運転車の投入もできていない状況です。
Waymo(ウェイモ)
2016年Googleの自動運転開発部門が分離して設立された会社です。Waymoは2020年後半からすでにアリゾナ州、フェニックス市で無人の自動車の配車サービスを行っており、一部のエリアですが、一般道で完全自動運転車を走らせることに成功しています。またこの完全自動運転を実現した車両はタクシーのような感じで、スマホのアプリから簡単に配車依頼を行うことができ、乗車した人を目的地まで運んでくれます。
Waymoが提供している配車サービスですが、以下Youtubeで他の車も走っている一般道を他の車と速度を合わせるような形で長距離運行を行っているのを見ることができます。
Waymo社については、下記記事で詳しくまとめています!
Zoox(ズークス)
Amazon参加の自動運転系の会社といえばZooxです。Zooxは運転席を完全に排除した自動運転タクシーをすでに開発しており、そのエクステリア、インテリアを公開しています。
Zooxは、カリフォルニア州フォスターシティーと、サンフランシスコ、ラスベガスの3都市でテストを実施している状況で、数年以内に一部の都市でサービスの提供を開始するという見通しです。
走っている映像も一部公開されていますので、是非ご覧ください。
一般車両を自動運転化しているWaymoとことなり、Zooxは車両も自動運転にむけて開発を行っている点がこの2社で大きく異なる点ですね。
MONET Technologies
トヨタ、ソフトバンク、ホンダ、マツダなど日本の大手自動車メーカーとソフトバンクがタッグを組んで設立された会社です。非常に期待値も高かったのですが、現状ではキャンパス内での自動運転や効率的なライドシェアサービスの提供といった範囲にとどまっています。
BOLDLY
ソフトバンクの子会社で自動運転技術を取り入れ、無人の路線バスサービスを提供している会社です。日本の各地域に実証実験と提供を行なっており、すでにいくつもの実績を上げています。ただ、路線バスなので同じルートを走行するということに特化されて開発されているようです。
今後に向けての課題
最後に今後自動運転が発展していくためにはなにが必要になってくるか見ていきましょう。
あらゆる環境への対応
現在一部の地域では完全な自動運転車が走行していたり、一部の条件下ではシステムが運転を行っているところを見てきましたが、あらゆる環境下で自動運転を行うには、より多くのデータが必要になるのと、道路事情が異なる地域やイレギュラーなことが起きた際の対応など、今行っていることの何十倍もの対応が必要となってきます。
セキュリティ
自動運転車はインターネットに接続されています。自動運転車が社会に溢れると、その通信のセキュリティが大事になってきます。万が一多くの自動運転車がハッキングされ、悪用されてしまうと、恐ろしいことが起きてしまうというのは想像に難くないと思います。
ハード面の品質
これも数台〜数百台であれば、完全に人の目が行き届き、車の安全性を完璧に担保した上で、市場にだしていくことが可能かもしれませんが、これが世界各国に販売して多くの売り上げを上げていくモデルになると、そうはいきません。絶対に壊れないような堅牢かつ安全なハードを大量に生産していく緻密さが必要になってきます。
さいごに
いかがでしたでしょうか?ここまで自動運転の現在地をみてきました。もしかしたら、意外とすすんでるなと思われている方や、まだまだ課題はありそうだと感じている方もいらっしゃると思います。もう少し経てば新しい発表や今後の筋道などもっと見えてくるかもしれないですね。楽しみに待ちましょう。
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